NPO法人代表者インタビュー「NPOエール」No.006発行しました

石川県NPO法人設立エール

NPO法人に興味がある、社会起業を考えているけれど…。そんな方々の不安や迷いを少しでも解消するために、NPO法人を運営している現役の方々の生きた言葉をお伝えします。今回は石川県のNPO法人さんにインタビューをさせていただきました。

被爆の実相を次世代へ~NPOエールインタビューNo.006

NPO法人「はだしのゲンをひろめる会」
(インタビュー実施日:2015年8月)

【団体概要】
団体名:NPO法人はだしのゲンをひろめる会
事業開始年月:2013年5月
所在地:石川県金沢市
代表者:浅妻南海江
URL:http://hadashinogen.jp/

事業目的:国内外の次世代に対し、原爆被害の実相と核兵器の非人道性を伝え、核兵器廃絶と平和への思いを継承していくため『はだしのゲン』の精神を普及する事業を行い、「核兵器のない世界」をめざす運動を発展させることに寄与することを目的とする。

【インタビュー】
話し手:NPO法人はだしのゲンをひろめる会
理事長 浅妻南海江さん、理事 神田順一さん
聞き手:ひがし行政書士事務所 代表 東真稔

NPO法人化で得られた資金の透明性と外部の信頼

東)任意団体からNPO法人設立、そして現在まで3年半ほど精力的な活動をされていますが、立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
神)核戦争を防止する石川医師の会、石川県生活協同組合連合会、そしてはだしのゲンの翻訳ボランティアグループであるプロジェクト・ゲンの有志メンバーでの集まりからスタートしました。
東)法人化はスムーズに進みましたか?
神)2012年の1月に最初、「はだしのゲンを寄贈する会」をつくろうということで集まり、その後、相談会を6回開催しました。その中からNPO法人化の話も出てきて、県の相談センターで3回くらい勉強会を開いてもらったりしていましたね。そこで流れを理解できたというかNPOの大筋が分かってきました。だから1年くらいは相談会や勉強会に時間に費やしましたね。

東)法人形態は最初からNPO法人と?
神)株式会社などの営利組織は団体の趣旨からすると違うし、それだけの資金もないでしょ(笑)
浅)NPO法人は行政と関わっているので経理の面でクリアになる、透明性がありますよね。そういった点がNPO法人はすごくいいなと思います。
神)敷居が高いなとは思いましたけど。
東)敷居が高いというのは…NPO法人に対してですか?
神)はい。NPO法人になると県への報告義務が付いて回るじゃないですか。今までの任意団体とは違う。そのあたりでどの程度、拘束されるのか検討がつきませんでした。そういったこともあって敷居が高いなと。

東)行政の認証を得て法人格を持った組織ですからね。義務と責任も付いて回りますが、NPO法人化して良かったことはありましたか?
神)銀行で通帳を開設するにも個人だと個人名義になるし、色々と面倒だけれど、法人化していると登記簿謄本を持っていけば法人名義で開設できる。それも法人化のメリットですね。
浅)NPO法人化によって、対外的にも他のNPO団体と協働するにも対等になったというか、例えばJICA(国際協力機構)にお願いするにも「NPO法人」と名前に付いていますから強いなと感じます。

神)会費や寄付金が原資になるので、それを透明性をもって集められることもメリットですね。任意団体より法人格を持っている方が信頼性ありますから。そういうことでもっとたくさん集まるかと思っていましたけど(笑)
浅)もっと頑張らないと(笑)
東)(笑)
神)まぁ、法人化した理由のひとつに、助成金を受けるにも任意団体では申請してもなかなか受けられないだろうということもあります。任意団体では審査に通りにくいでしょうし、出す方も助成金を出しにくい。今年、北陸労働金庫さんから助成金を受けることができたのですが、それもNPO法人化した成果のひとつですね。
浅)私たちは石川県だけの活動でなく世界へ向けての活動が多いので、そんな私たちに北陸労働金庫さんが助成してくださるのは本当にありがたいことです。

地道な情報発信で広がるゲンの世界

東)私は愛知県出身で石川県ではないのですが、自宅に「はだしのゲン」があったので幼い頃から読んでいました。自分と同世代の人たちは読んだことある人が多いのではないかと思います。
浅)そうですね。ちょうど親御さんが70歳くらいのお子さんは、いま社会的に活躍されていて、家や学校で「はだしのゲン」を読んだとか、ゲンだけは読んで良かったとかそういう方がいっぱいいらっしゃいます。それだけ影響が大きかったのかなと思います。
神)そういう声はよく聞きますね。

東)なるほど。このあたりの学校にはゲンはどれくらい入っているんですか?
浅)70~80%くらいの学校に入っているんじゃないでしょうか。
神)金沢市教育委員会に調べてもらったんです。たしか8割以上の学校に入っています。ただ、よく読まれているので本がボロボロになったり、欠損していたりしているので、すでに持っている学校からも寄贈して欲しいと手が挙がりました。それくらいよく使われています。
浅)男の子は大丈夫でも、低学年の女の子はちょっと怖がるかもしれませんけれど…。
東)それでもこういった本が本棚にあるだけでも違うって言いますよね。
浅)そうですね。だから学校などで閲覧制限をするということは、私は罪の重いことだと思います。

東)きちんと情報公開、情報発信するということはとても大切なことだと思います。ホームページを拝見しましたが、しっかり活動報告を掲載されていて、頻繁に更新されていますね。
神)ホームページの講習を受けた時に、最低でも2週間に1回は更新しなさいと言われました。作っていただいた方からは、50団体くらいある中で、うちが一番アクセス数が多いと言って褒められました。マスコミに取り上げていただいた影響もあるかと思いますが、褒められると嬉しくなってまた更新するわけです(笑)
浅)昔の活動や情報を引っ張り出してきたりして(笑)
東)休眠してしまっているNPO法人が多い中、地道な努力を継続されていることに頭が下がります。

良いことをしている「気」になったら駄目

東)立ち上げから現在まで、運営面でご苦労されたこともあるかと思います。
神)書類の提出などが定期的にあるのですが、県への提出やら法務局への提出やら大変ですね。それはNPO法人化するにあたって分かってはいたことですし、年間スケジュールが決められてはいますけど、やはり煩雑。きちんと情報公開することがNPO法人の良いところでもあるのですが、もう少し簡素化できないのかなと思います。
東)会の活動をしながら、県への報告と法務局への登記、大変な作業です。
神)県は事前に書類の確認をしてもらっているので大丈夫ですが、法務局は事前に確認をしていても、一回目の担当者と二回目の担当者が違ったりすると、それぞれに違ったことを言われたり(笑)。そんな中でも今までの経験が活きていることもありますよ。以前、会社の法人化に関わったことがあって、手続きやその後の実務、例えば複式簿記についてはずっとやってきました。それがNPO法人での今の活動につながっているなと思います。

東)事務手続き以外ではどうですか?
浅)そうですね、はじめの頃は私たちもあまり考えず、ゲンを送ったりして相手先に迷惑だったのでは…と考えさせられることもありました。「はだしのゲンをひろめる会」で私たちは世の中に良いことをしている気になることがありますが、ある人たちにとっては、それはおもしろくないことでもあります。だからこそ、相手方の意思を尊重して寄贈をするよう心がけています。「自分たちは良いことをしているんだ」という一方的な想いではなく、相手のことを想いながら活動をしていくこと。それが一番大切なのかなと感じています。

東)その分、相手方との想いが重なったときは嬉しさも大きいのでは?
浅)海外からもゲンを読んでくださった方から感想文がきたりするわけですが、それはやはり嬉しいですね。もっとたくさんの方々に読んでいただきたいのですが、まだまだ数は少ないかなと感じます。最近はアラビア語版のゲンも出て翻訳は23カ国になりましたし、中国語版も現在出版社を探しておられるようです。
東)今年に入ってからだけでもアメリカや北京、台湾、ニュージーランド…海外へ多数寄贈されているんですね。
神)ええ。パラオの場合は、七尾市の住職さんからの紹介で寄贈させていただいたり、ニュージーランドの方はホームページを見てくださって連絡が入り、先月寄贈させていただきました。英語、ロシア語は翻訳できる方がいるんですけど、でもニュージーランドやロシアからの連絡は、日本語でメールがくるとホッとしますよ(笑)

核廃絶へ向けて、ゲンと共に走り続ける

東)はだしのゲンを広める会は10年後、どうなっていますか?
浅)10年後は私はリタイアしてるかな(笑)若い方達がもう少し入ってきてくださったらいいなとは思いますね。
神)私も定年退職してからこれだけ実務をするとは思いませんでした(笑)
浅)複式簿記ができる人やホームページの更新、管理ができる後継者を見つけないといけませんね。資金とかそういうのは努力すれば集まるかもしれませんが、人材を集め、育てるのは一朝一夕にはいきませんから。

神)一つの組織をつくるというと、まず役員会があり、その下に事務局体制をつくり、そして会計があり庶務があり…それぞれの役割があります。役員だけ偉い人、優秀な人を集めても実務、会計のできる人を複数集めないと将来につながっていきません。初代の人達は皆さん情熱をもってやっているけど、その後がなかなか続かない…NPO法人にはそういった悩みは結構あるんじゃないかな。
浅)今後もベテランの人達がやっているのと同じように活動していけるかどうか。若い人たちにもあまり無理も言えないので、やっぱり定年退職した人たちに頑張ってもらわないと(笑)
神)10年後はあまり明るくない?(笑)
浅)(笑)
東)(笑)

神)私よりも少し上の世代の方の中にも、60歳で定年を迎えたら「社会活動をするんだ、次の人生を歩むんだ」ということで頑張っている人も結構いるんですよ。閉じこもり症候群ではないけれど、社会的な役割をもって人と関わるということは大事なことなので、そういう方達を活かしていければなとは思います。
東)NPO活動への関心は高まっていますからね。
神)先日もあったのですが、例えば原水爆禁止の国際会議や海外の平和運動、そういう集まりに参加する熱心な人たちでさえ「はだしのゲン」を読んだことがある人は数人しかいないんです。まだまだ私たちの会が発展する余地はあるし、まだまだ頑張らないといかんなと。

東)世界中にゲンの希望が広がったとき、世界が変わっているのかもしれませんね。本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。
浅)ありがとうございました。
神)ありがとうございました。

最後に、読者の皆様へ理事長の浅妻さんよりメッセージをいただきました。

「ひろめる会」という名前のとおり、国内外を問わず、若い人たちに読んでもらって、ゲンの体験を共通の認識として持ってもらえたら、核兵器に対する認識も変わってくると思うんです。アメリカでは割合読まれているんですが、アメリカの出版社が出資者を募って、アメリカの学校や図書館へはだしのゲンを寄贈する活動もしてくれています。

イスラム圏へも広がっていくことが大事だなと思っているんですが、一番はやはりアメリカ、あるいはロシアの若い人たちに広げていくということが、核廃絶へ向けての望みになるのではと感じています。

私たちの活動に大きな影響力があるかどうかは分かりません。世界全体から見れば小さな動きなのかもしれません。それでも私たちのあとに続く人たちが活動を続けていってくれて、そして、ゲンの希望が世界中に広がってくれたら嬉しく思います。

 

 

NPO法人メリット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

NPO法人で社会起業を志す方は必見です!

申請書類作成からNPO法人誕生までのポイントを押さえよう!

>>NPO法人のつくり方

現役NPO法人理事長の生きた言葉から運営ノウハウを学ぼう! No.5まで発行中!

>>NPO法人理事長インタビュー集「NPOエール」

 

この記事の著者

NPO専門行政書士

 

 

 

 

NPO専門行政書士 東 真稔(ひがし まさとし)昭和53年5月25日生まれ 愛知県出身。

社会人時代にNPO法人の運営に長年携わっていた経験を活かし、現在はNPO法人、一般社団法人で社会起業を目指す方々を行政書士の立場から全国的に支援している。また、金沢の大学にて「大学生が3年間かけてやりたいこと・なりたいものを見つけるキャリアアップ講座」の非常勤講師を担当。幅広い分野で活動中。

趣味はサッカー観戦、娘と公園やカフェでデート、風景画。

東真稔オフィシャルブログ「NPO専門行政書士の歩み☆毎日がSailing Day」更新中。